Review 10
秋摩 竜太郎
パンクって、ロックって必要なのか?
──そんなことが問われに問われた2020年。
もちろんウイルスは怖くて、感染対策も不可欠だが、バンドにとって、音楽業界にとってはあまりに辛く、苦しい時期が続いている。
ときにはライブやライブハウスが、あるいはバンドマンやそれに関わる人までもが、一部の色眼鏡をとおした視線に晒され、不必要な苦汁を嘗めることもあった。それにしても、まさかライブが観られなくなるなんて。
ハコに行けないぶん、必然的に無観客/有観客の配信ライブをチェックすることが増えた。もちろんバンドがそういう試みをしてくれることは嬉しい。
そして新たな楽しみを見出すこともできたのだが、それが好きなバンドであればあるほど、自宅モニターに映るものと今まで肉眼で捉えてきた景色の違い、Wi-Fiに乗って飛んでくる音と各楽器が渾然一体となり空間を震わせ五臓六腑にまで響きわたるサウンドとの差異が、肌にまとわりついて仕方ない。
何より理性をぶっ飛ばすあの熱狂、興奮のるつぼを現場と同じように感じ取ることは難しい。あらゆるいきものは、ただ生きている。しかし人間だけはそれができない。
少なくとも自分は、生きていて楽しかったり、幸せだったりもするが、同時に顔をひしゃげて泣き腫らし、果ては心がくたびれ無気力無感動になったりもする。
音楽がなければ越えられない夜がどうしたってある。
ライブハウスの壁を乱反射するドーン!って爆音を浴びることでしかやり過ごせない気持ちがある。
ライブのある生活、それが自分にとっては“健康で文化的”なのだ。
そういう人に対して、今回の「PIZZA OF DEATH RECORDS PRESENTS BECAUSE IT’S 2020」は、これ以上ない贈り物である。
すべて一発録り、CDならではの高音質。
しかもスタジオ録音と違って、ライブハウス特有の鳴り、空気感、そしてアレンジがパッケージされている。
すでに発売されているSuspended 4thなんて、MCや、インプロヴィゼーションの応酬によるメンバーの化学反応までもが生々しく刻まれている。
きっと毎年毎月毎日毎秒がそうなのだろうが、2020年は特に常軌を逸した年だった。
でも、だからこそ、今しか鳴らせないものが確かにある。
ライブができない? だからってバンドは何もできないのか? いやいやそんなわけねえだろ!と、この作品群は高らかに宣言している。
これは業界や社会の現状に対するPIZZA OF DEATHからの回答であり、晴れやかなカウンターパンチに他ならないのだ。
パンクとかロックって正解はないけど、別に反抗したり怒ったりするもんじゃないと思う。
既存のものさしに縛られず、自分たちなりに最善の方法を見つけ出し、やりたいことを実現して、人に何かを届ける。
本来のDIYとか、自由とか、そういうものを体現する表現手段であるはずだ。そう考えれば今回のレーベル主催無観客ライブ盤ナンバリングシリーズは、最高にパンクでロックだと言える。
カッコいいぜ、PIZZA OF DEATH!