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PIZZA OF DEATH RECORDS PRESENTS [ NECAUSE IT'S 2020 ]

CROSS REVIEW

Review 11
田島 諒

2020年。よもや、よもやだ。これを書いているのは11月。あと1ヶ月半もすれば今年も終わるが、振り返るほどに腹が立ってくる。怒り新党大結成っすよ。私がホームにしていたライブハウスを中心とするシーンは、今も先の見えない暗闇の中にあり、この状況をポジティブに"夜明け前"だなんて考えられない。友人が店長を務めるライブハウスは、今までも全然人がいなかったけど、さらに人が寄り付かねぇ。

一時期、ライブハウスがクラスターの根源であるかのようにメディアが報じたことがあった。あれが世間に与えたインパクトは大きくて、今も悪いイメージは尾を引いているだろう。

下半期に入って、ようやく少しずつ有観客ライブがガイドラインに沿って開始されたが、その光景は今までとは別物だった。小箱でのライブは閉塞感があり、お客さんもバンドマンも心なしか萎縮しているように見える。パンクやハードコアのシーンにとって、新しい生活様式に則ったルールは辛いもんがある。しかし、今回ばかりは中指をグッと握りしめて決められたことを守るしかない。

パンデミック初期の東京では、何かバンドマン自体が保菌者予備軍的な捉えられ方をされているような節もあった。5月のある日、趣味のバンド練習を終えた後、楽器を背負って小田急線に乗ったが、子連れのお母様から「非常識なので次の駅で降りてくれ」と言われたことがある。そのときは『仕方がない。世界が荒んでるぜ』と思って静かに下車し、気にも留めていなかった。そう言えば、それ以来、楽器を持って電車やバスに乗っていない。

誰がムカつくとか、政治云々がどうといった個別的な話ではなくて、COVID-19に端を発する出来事と、それによる世界の変化、そのすべてに怒りを覚えてしまう。悲憤。怒っても仕方がないのにイラついてしまうのは単純に私が人として幼いからだ。

だが、こうした怒りは人間がアクションを起こすうえで大きな原動力となる。止むを得ず、何もできない。では、どうするか。そう考えて企画を練り行動に移す。

2020年のPIZZA OF DEATHの動向を振り返ると、そのような感情の変遷があったのでは、と推測できる。配信活動やサブスク解禁などのアクションは、一見すると他アーティストも同様に行っているように見えるが、すべてがライブハウスを中心とする音楽シーンに帰結している。バンドマンがバンドマンらしくあるために、レーベルが何をすべきかを考え抜いた結果としての行動であり、目的が明確であることを感じた。特に、レーベル直販のリリースはPIZZA OF DEATHだからこそ説得力を持って成立する。ミニマムに人に作品を届けるという行為に”らしさ”があり温もりを感じる。日本随一のインディーズレーベルらしい愛がある。

『BECAUSE IT’S 2020』は無観客ライブ音源であり、ナンバリングシリーズというところにレーベルが企画する作品としての真意が込められている。

では、ライブ音源とは一般的にどういうものなのか。私は記憶の記録だと思う。自分が行ったライブや、過去に行われた伝説とされるライブの数々。大好きなバンドが現場で実際に演奏し、オーディエンスと共に作り上げた時間を、時空を超えて聴ける喜びがそこにある。その点『BECAUSE IT’S 2020』は無観客ライブであり、本企画を踏まえてレックされたものであるので、オーディエンスの記憶をパッケージするもの音源とは少し性格が異なる。どっちかと言うと新作的な形で私たちのもとに届けられるものだ。では、何が込められているのかと言うと、バンドが持つ本質の証明が濃縮されて封じ込まれている。その証明力に圧倒されたのがSLANG盤とMEANING盤。この2バンドに関してはハードコアパンクという音楽性も相まってか、バンドのグルーヴにクラってしまった。微妙なリズムの揺らぎや、アドリブを効かせたギターソロ、終盤に至るにつれてボーカルやコーラスの声が割れてくる辺り、フィジカルの魅力がストレートに伝わってきて、ああ、もうさすがだな……と。聴いていてボリュームをドンドンあげたくなった。もちろん、全バンド熱くて情熱的なのだが、個人的な好みもあって、この2枚を聴き込んだ。セッションや雑談も合わせて表現されているSuspended 4th盤。終盤に「お客さんの前でやりてぇ」と語るMCが8曲目に収録されていて、この言葉が『BECAUSE IT’S 2020』というライブ盤シリーズの個性を決定付けている。だってさ、2020年って、あんな風だったもんね、という未来へ向けたライブ盤。リスナーにとっては誰の記憶にもない。だけど確かに実在した、ライブハウスで鳴らされた、2020年だけのライブ記録『BECAUSE IT’S 2020』。

これは、コロナを克服した時代に引き継がれる、PIZZA OF DEATHが作ったタイムカプセルなのだ。

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