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PIZZA OF DEATH RECORDS PRESENTS [ NECAUSE IT'S 2020 ]

CROSS REVIEW

Review 05
ビトウ マサヤ

 新型コロナウイルスの脅威により “自分に何ができるか?”、“今、何をすべきか?”、そして“これからどうやって生き抜いていくか?”……多くの人々が自問自答に明け暮れた2020年。そんな悶々とした不安を打破すべく、先鞭をつけたのが今回の“Because It's 2020”だ。

 まず最初に言っておきたいのは、このスピード感でプロジェクトをまとめて実現させることができたのは“PIZZA OF DEATH RECORDS”だからこそだろう。これだけ豪華な生粋のライブ・バンドたちが賛同して参加したのは、20年以上にわたりレーベルがアーティストやリスナー、世の中に対して“ブレない姿勢”を示し続けてきたからであり、その背中を信頼しているからこそにほかならない。PIZZA OF DEATHはレーベルながら、所属アーティストと同じく素晴らしいアティチュードを持ったパンクロック・バンドとも言えるだろう。

 今回リリースされる作品群の中で例を出すと、まずは白刃で切り結ぶようなスリリングな演奏で魅せたSuspended 4th。通常ならば約3分の代表曲「ストラトキャスター・シーサイド」も、遊び心と自由度が増したライブ・アレンジにより至福の8分間へと変貌させた。楽曲は演奏するごとに成長していく。このような聴き手を翻弄する変化&進化はライブ演奏における醍醐味のひとつだ。

 そしてKen Yokoyama。誰もが心の中に持っている“ポケットの中の握り拳”を突き上げたくなるような熱狂的な演奏がパッケージされていて、聴き手の心を激しく揺さぶる。彼らのライブを観ていつも感じるのが、集まった大多数全員に向けてではなく“お前に言ってんだよ!”とひとりひとりと向き合って対話するようなパフォーマンスだということ。スピーカーでもいい、イヤホンでもいい、カーステレオでもいい……今回の作品のように対一個人としてバンドの演奏と向き合い、シビれるような真剣勝負をぜひ全身で楽しんでほしい。

 普段、多くの人が耳にする楽曲は、スタジオにて長い時間をかけて考え抜かれた末に生み出されたフレーズやサウンドで構成され、それぞれの楽器の音量バランスなども調整/編集されたことで完成した『作品』だ。それに対して『ライブ盤』は、アーティストが放つ生々しい熱量を真空パッケージしたものと言えるだろう。その場所において瞬間最大風速で荒れ狂うグルーヴは、問答無用で聴き手の心を鷲掴みにするような暴力的な魅力が宿っていると感じてならない。

 いつの時代もキッズの心に火を灯すのは“体験”によるプリミティブな衝動であり、“僕にもできる/やりたい”という素晴らしい連鎖反応を起こしてきた“ライブ”作品をこの閉塞感に満ちた現代に提供することには、とても大きな意味がある。そして名は体を表わすというように“RECORD=その日・その場の記録”というレーベルの基本をメジャーではなくPIZZA OF DEATHがやるということに、“考えて、すぐに動く”という彼らの確固たる矜持を垣間見た気がした。時代の激しい荒波をも軽やかに乗りこなしていく姿は、ステージで自らを表現しているバンドと同じくカッコ良くて、素敵だと思う。

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