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PIZZA OF DEATH RECORDS PRESENTS [ NECAUSE IT'S 2020 ]

CROSS REVIEW

Review 14
中沢 純

ライブバンドを”居るべき場所”へと誘うナンバリングシリーズ

 2020年で連想することといえば、新型コロナウイルスの猛威に尽きる。小松左京の一連の作品や大友克洋の『AKIRA』、映画『12モンキーズ』のような、まさか既視感のある近未来SFの世界線に、現実のピントが合ってしまうとは思いもよらなかった。日常が一変し、多くの人たちの未来がねじ曲がってしまった。音楽との向き合い方も変わり、ZAIKOなどの電子チケット販売プラットフォームでチケットを買い、配信でのライブ観賞が普通になるとは……生でライブを体感したのはいつが最後だろうと、ふと考えてみたら今年の2月頭だった。夏の風物詩であったフェスも軒並み中止となり、恒例、定番というのがいかに素晴らしいことだったのかを思い知らされた。

 多くのバンドにとっても例外ではなく、予定されていたライブがたくさん中止になったり、会うこともはばかる状況だったので一緒に音を出す機会も減った。ライブバンドにとってライブができない、というフラストレーションはいかほどのものか。大小の会場に関わらず死活問題に直結し、ライフサイクルが狂うことによって作品作りや活動へのモチベーションにも影響を与えたことだろう。そんなバンドたちの危機的状況を憂い、レーベルの存在意義を改めて考え、バンドを救済すべくレーベル主導で企画を発信することになった。それがPIZZA OF DEATH RECORDSというバンド至上主義レーベルが仕掛けるDIY、初のナンバリングシリーズ『BECAUSE IT’S 2020』である。

 今回、レーベルの声かけに賛同したメンツも多士済々で、Ken Yokoyama、GARLICBOYS、SLANG、MEANING、DRADNATS、BURL、ember、Country Yard、Suspended 4thのライブ盤が続々と登場する。ライブハウスを借りて無観客ライブを敢行し、一発録りでパッケージしたスペシャルなライブ盤だ。なんでも80'sや90'sのパンクバンドがスタジオで行ったライブや、デモ用に一発録りした音源などをイメージしているとのこと。小学生のときにザ・ブルーハーツを通して知った、”一発録り”という魅惑的な言葉。漠然とすげえことなんだと勝手に認識。それ以来、一発録り作品は大の好物である。ある意味、現在の状況下でしか実現できなかった試み。禍を転じて福と為す。

 それぞれのバンドのサウンドから迸っている、ライブハウスで演奏できる喜び。そんな多幸感はもちろん、たまりにたまった鬱憤や怒りのエネルギー、ピーンと背筋を伸ばしてくれるような緊張感も張り巡らされている。様々な感情が詰まりに詰まったパフォーマンスの数々から感じられる、取り戻したライブバンドとしての誇り。そして、純粋にライブ最高!という気持ちの宿った、我々を何度でも立ち上がらせる”音”がここにはある。コロナ禍の現実を真正面から受け止め、それでも前へと進むアティテュード。憂鬱な毎日を爆音で蹴散らし、またライブハウスで会おう、という約束を強く誓うナンバリングシリーズだ。

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