GARLICBOYS
2020.09.30 at Shinsaibashi ANIMA
2021.02.12 Release / PODRS-11 / 2,000yen(+tax)
- TRACK
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- 1. DQ69
- 2. 1+1+1=危険な関係
- 3. ゆうことカズき
- 4. 凄絶ディザスター
- 5. 失恋モッシュ
- 6. 老兵は死なず(新曲)
- 7. 電撃セラピー
- 8. 泣き虫デスマッチ
- 9. 笑って死にたい
- 10. 荒野のさびしん棒
- 11. YOKOZUNA
- 12. GARLICBOYS
- 13. 絶叫岬
- 14. イエイ ラッキー
- 15. あんた飛ばしすぎ
![play](https://bi2020.pizzaofdeath.com/wp-content/themes/bi2020_review/assets/images/icon-play.png)
DISC REVIEW
「兄さん、出番です! 最後よろしくお願いします!」
誰が言ったか言わないか、そんな声が聞こえてくる。昨年11月から始まり、所属バンドの一発録り無観客ライブ音源を連続で世に送り出したピザオブデスのナンバリング・シリーズ「BECAUSE IT’S 2020」。トリを務めるのは、もちろん、ガーリックボーイズだ。
今年結成36年目に入ったレーベル随一の長寿バンド。ラウドロックやパンクの世界を見渡しても、これ以上歴史あるバンドといえばthe原爆オナニーズあたりの名前を引っ張り出すしかないだろう。しかし、巨匠でも重鎮でもレジェンドでもなく、今も「兄さん」と呼びたくなるチャームポイントが満載。そんな4人組の手によって当企画は幕を閉じる。
今となれば「ももクロがカバーした『あんた飛ばしすぎ』のバンド」と書くほうが早いのだろうが、♪飲んじゃって、吐いちゃって、なーんちゃって、の語呂遊びだけを見ても兄さんたちの凄さは伝わりきらないので、以下。
スラッシュメタルとパンク/ハードコア、ハードロックやフォークまでを取り入れた幅の広いサウンドと、男泣きの歌謡メロディ、さらにはコミックソングのように見えて実は奥深い歌詞世界。誰にも言えなかった屈託や生きることの侘しさ、枯れてもまだまだ滾る魂のありよう。後者を歌った6曲目「老兵は死なず」は唯一の新曲でもある。歴史を見ればヌンチャク、マキシマム ザ ホルモン、打首獄門同好会など、生活の中の小ネタをラウドロックと結びつけたバンドはごく少数枠で続いているが、その元祖こそガーリックボーイズであり、誰より味わい深い和モノ・歌ものとしてのオリジナリティを誇るのもまた彼らである。
モッシュピットで「笑って死にたい」と野郎共が絶叫し、絶叫の中にも確かに焼き付くメロディの良さがあり、その奥には人類共通の切ない願いを滲ませた感動が生まれる。多少は盛っている気もするが、それくらいの懐の深さがこのバンドには備わっている。そしてまた、このバンドを嫌ったり悪く言うミュージシャンを今まで見たことがない。これも重要なポイントである。
大阪は心斎橋アニマで収録されたクラシック全15曲。無観客ゆえにしっとり聴かせる曲の出番はなく、リズム隊は48分をひたすら全力で駆け抜ける。Larryのリフは猛烈な速度で刻まれ、同時にソロは泣けるほど豊かに響く。Petaの歌唱も最初こそ少々不安定だが、中盤、後半になるとどんどん声が出てくる。その生々しさも一発録りの魅力だろう。そして、最も頼もしいのはここぞという箇所で出てくる全員のコーラス。うおぉ兄さん! 早く会いてぇ! 気持ちが爆発して自宅スピーカーの前で両手を上げ、本気でシンガロングするファンたちの姿がありありと目に浮かぶ。興奮しきった姿を嫁などに見られる恥ずかしさ。そこも含めてガーリックボーイズだ。
繰り返すが、ナンバリング・シリーズはこれが最終便。ライブハウスが元通りになるまで、永遠に聴いていられる兄さんたちからの手土産である。