Review 06
柴山順次 (2YOU MAGAZINE)
「当たり前なことが当たり前じゃなくなった2020年。じゃあ当たり前ってなんだっけ」となんとなく辞書を引くと、そこには対義語として「感謝」「ありがとう」の言葉があった。「ありがとう」を漢字で書くと「有難う」つまり有ることが難しいという意味があるという。
朝がきて目が覚めることが当たり前で、息が出来ることが当たり前で、友達に会うことも、ご飯を食べることも当たり前。そんな日常の当たり前が実は奇跡の連続だったことに気付きハッとする。
そして僕らにとって当たり前だったことのひとつがライブハウスでライブを観るということだ。
今から30年くらい前、音楽が禁止された街を舞台にした「スターライト・キッズ」という光GENJI主演のドラマがあったが、まさか本当にライブが自粛を強いられることになるとは思ってもいなかった。
そんな状況がもう何ヶ月も続き、当たり前にそこにあったライブというものが「有ることが難しいもの」になってしばらく経つ。
ウィズコロナなんて言葉も目にするが、日々状況が変わる中で、音楽を発信する側も、音楽を受け取る側も、生活と共に音楽があることをきっと誰も忘れたくないはず。いつだってウィズ音楽だ。
脅威の春を過ぎ、夏には、秋には、という希望を無視するかのように冬がやってきて、失ったものの大きさにくじけそうになることもある。みんなきっとギリギリのところで生きている。
でも、だけど、こんなときこそ、こんなときだから、音楽の持つパワーを信じたい。
こういうとき、僕らを先導してくれる存在がPIZZA OF DEATHだ。この国を襲った未曾有の事態にケツを蹴り上げてくれたのも、今この事態にアクションを起こしてくれたのも、いつだってPIZZA OF DEATHだ。
音楽の聴き方や楽しみ方は様々で、それはコロナ禍において更に多様化した気がする。
家にいながらライブを観る楽しさも体験して初めて分かったことだ。だけど心のずっと奥の方には「ライブハウスでライブを観る」という当たり前だったことが今もど真ん中にあって、たとえそこに自分がいなくても、ライブハウスでバンドが音を鳴らしている事実を感じることが出来るなら、それはもうたまらなく嬉しい。
ライブハウスで音が鳴るという、そんな当たり前のことを有り難く感じることなんて、もしかしたらコロナがなかったらずっと気付かなかったかもしれない。
ライブハウスで確かに鳴ったその音が、PIZZA OF DEATHの手によって愛と敬意をもってパッケージされ僕らに届く。
音楽がその時代を投影するのであれば、後に振り返ったとき、『BECAUSE IT’S 2020』と名付けられたこのシリーズは必ずや2020年を象徴するものになるはずだ。
音楽を、ライブを、僕らの手に取り戻そう。未来はきっと怖くない。