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PIZZA OF DEATH RECORDS PRESENTS [ NECAUSE IT'S 2020 ]

CROSS REVIEW

Review 13
高木智史(Real Sound)

 年が終わりに近づく頃、仕事柄いつも「今年は何本ライブに行ったか」「今年の一番のライブは何だったか」と考える。2020年。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、2月下旬ごろから多くのライブが開催の延期、中止を余儀なくされた。そして11月に入っても、気がつけば両手で数えられるくらいしかライブの記憶がない。

 いまや全てが懐かしい、2019年。強く記憶に刻まれているのは9月27日、O-Crestで開催されたSuspended 4th『GIANTSTAMP Tour』の最終公演だ。そのライブ以来、彼らの地元・名古屋でのストリートライブを観に行きたいと思っていた。もちろん、ライブハウスでのアクトも観たかった。しかし、音楽を取り巻く状況はすっかり変わってしまった。

 今年一番のライブは何だったのか――そんな回想を楽しむ材料がないことに、例えようのない虚しさを感じていた、2020年11月20日。PIZZA OF DEATH RECORDSによる『BECAUSE IT’S 2020』プロジェクトの第一弾としてSuspended 4thの一発録り無観客ライブ盤がリリースされた。冒頭にはギターのチューニングの音。「景気付けに『ストラトキャスターシーサイド』から」と言うKazuki Washiyama。カッティングからジャムが始まるSuspended 4thの「この感じ」に、O-Crestで虜になったステージの光景が、頭のなかで再び像を結ぶ。1曲目の「ストラトキャスターシーサイド」をはじめ、ほぼインストというのもいい。バンドが演奏に思いのすべてをぶちまけているようで、ライブに求めていた熱さが蘇ってきた。

 鮮烈な記憶が、より深い記憶を呼び覚ましていく。例えばKen Yokoyamaの武道館公演で聴いた「Ten Years From Now」、新木場STUDIO COASTで聴いた「Ricky Punks Ⅲ」、SHIBUYA-AXで聴いた「Sucky Yacky」(EKKUNのボーカルが2008年の同公演でラストライブとなったサージの太い声に似ていてそこもアガったポイントだった)。そんな記憶を遡る旅の終着点は、GARLICBOYSの「あんた飛ばしすぎ」だ。高校生の頃、バーを改装した30人も入ればパンパンになる地元のライブハウスで、友人のバンドがGARLICBOYSをカバーしていて、もみくちゃになりながら騒いだことを思い出す。あの友人は、今どこで何をしているのだろう――。

 ライブには現場だけの楽しさだけでなく、そんな記憶や人との繋がりを思い出させる力がある。このコロナ禍で、ストリーミングやパッケージも含めて映像でライブを楽しむ機会が増えたが、どこか乗りきれない自分もいた。しかし、この『BECAUSE IT’S 2020』に耳を傾ければ、バンドの息遣いや演奏のヨレまでありのままを収めた一発録りの音源が、そこにはない観客の盛り上がりや声といった実際のライブの映像まで感じさせ、没入感とともに、ライブ本来の楽しさを正しく伝えてくれるように感じたのだ。

 また安心してライブハウスに行けるようになるまで――4月にはレーベル音源のサブスク解禁というサプライズがあったが、PIZZA OF DEATHによる『BECAUSE IT’S 2020』は、所属バンドや音楽ファンのそんな思いを汲んだプロジェクトであり、レーベルとしての音楽への思いの強さ、そしてクリエイティブの力を感じた作品だった。

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