コロナ禍におけるPIZZA OF DEATHの新提案、一発録り無観客ライブ盤「BECAUSE IT’S 2020」の第1弾を掻っ攫うのは名古屋は栄のど真ん中「〒460-0008」噴水前から音×音×音×音を乱射するSuspended 4thだ。
路上を拠点とする彼らの活動スタイルはそのまま音楽スタイルにも直結しており、様々な人が彼らの目の前を交錯するように入り乱れるルール無用で雑多でジャンルレスな音楽を生み出している。
意外と取るか必然と捉えるか、2019年にはまさかのPIZZA OF DEATHと契約が話題となり、同年7月に放たれた『GIANTSTAMP』は音楽欲、音楽愛で満ち足りたザ・音楽アルバムだった。ハードロックもジャズもファンクもパンクも混ぜ込んだ全部乗せ感はこれっくらいのお弁当箱にハンバーグとラーメンと寿司とプリンを打ち込んだ新・幕の内感満載。
それがめちゃくちゃ美味しいんだからとんでもない。
セットリストがないのが路上ライブの特徴でもあるが、Suspended 4thのライブではインプロビゼーションセッションが多々行われる。
まさにライブな瞬間なのだが、そのインプロビゼーションがパッケージされていることも貴重であり、なんならライブのインプロコーナーだけ集めたライブ盤も聴きたいくらいだ。
そしてそのインプロビゼーションに引っ張られて既存曲が絶妙に変化していくのもSuspended 4thのライブの醍醐味だと感じている。
現状、最新の彼らが生々しく封じ込められている『BECAUSE IT’S 2020』を聴くとよく分かるのだが、Suspended 4thの楽曲には完成形が存在しない。
例えば「ストラトキャスターシーサイド」なんてリリースから2年でとんでもない形に進化を遂げている。
そしてきっとまだまだ変わる。まるで生き物みたいだ。
発表時、つまり僕らの目の前で最初に演奏されたタイミングを第1形態だとすると、そこから常に進化を重ね、4人が音を合わせる度に新たな形を見せてくれる。
そんなSuspended 4thの無限のポテンシャルはミニアルバムの表題曲でもある「GIANTSTAMP」にヒントがある気がする。
ジャジーかつダイナミックな演奏の中で「踏み出した一歩」「大胆な一歩」という言葉が飛び込んでくるが、その一歩の強さ、その一歩の説得力が彼らにはあるのだ。そしてそれを思いっきり楽しんでいるのも最高だ。
ハードロックなリフの襲撃なんて絶対に楽しみながら笑いながらやってるだろうし、ファンキーなリズムを刻んでいるときはいい顔してそうでしょ。
そうやって音楽を楽しんでいる4人の、この瞬間でしかない音を収録した『BECAUSE IT’S 2020』は、2020年という誰にとっても忘れられない年に確かに鳴った音として封じ込める意味を感じさせる1枚となっている。音楽は止まらない。
Review by 柴山順次 (2YOU MAGAZINE)